「萌、疲れてるんだな。俺もだけど」
唖然とするわたしをよそに、裕太は軽く笑い飛ばした。
「本当にいたんだって! そこに……」
「分かったよ。ほら、急ごう」
「ハァ……。うん」
裕太に背中を押され、わたしは渋々折れて扉を通り抜けた。
狭い螺旋階段が遥か上まで続いていた。
見上げていると頭がクラクラするほど……。
「大丈夫か? もしキツかったらおぶるよ」
裕太が屈んで背中を向けてくる。
筋肉質になったとは言え、怪我をしている裕太に甘えるわけにはいかない。
誘惑に負けそうになりつつ首を振ると、わたしは階段に足をかけた。
その瞬間、カチリとスイッチが入る音がした。
地面がグラグラと揺れ、慌てて階段から飛び退く。
地震……!?
驚くわたしを抱き寄せながら、裕太がいち早く異変に気づいた。
「危ない!」
突然足元の地面が崩れ、底の見えない落とし穴が現れた。
裕太のおかげで穴に落ちるのは免れたが、わたしは急に不安になってきた。
他にも罠が仕掛けられているのではないかと……。
わたしたちは手を繋いで、慎重に階段を上がっていった。
しばらくすると軽く息が上がってきて、途中で立ち止まる。
「大丈夫?」
「うん……」
わたしは貧血を起こしかけたが、何とか気力を振り絞った。
やっと頂上に着いた頃には、二人とも息が切れていた。
若くて良かった……年寄りだったら、とっくに死んでるかも。
そんなことを思いながら扉に手をかけると、鍵がかかっていて開かなかった。
「……開かない」
「マジで? ……くそっ!」
頭を抱えて地団駄を踏む裕太。
わたしはショックでその場に座り込んだ。


