「うぐぅ……ッ」


 七福神が身体を丸めて呻く。


 顔色は悪くなっているが、それほど毒の影響を受けている様子はない。


 どれだけタフなのかと呆れてしまう。


 イシザキによると、七福神に痛めつけられたと言うが……。


 師弟関係ではなかったのだろうか?



「……ア、アレックス。お前は、私が育ててやったんだぞ。親代わりとして。そうだろ?」


 イシザキの殺気に気圧されたのか、七福神が
猫なで声を出す。


 喋る元気があるのに驚きだ。



「お前を一度たりとも親だと思ったことはない。お前も、俺を子だと思ったことはないはずだ」


 冷徹な眼差しを向けたまま、低く抑えた声で言い放つ。


 七福神の顔に焦りの色が浮かんだ。



「そ、そんなことはないぞ……。私は本当に、お前を息子同然に思ってきた」


「息子の頭を瓶でかち割り、腕の骨を折る親がどこにいる?」


「そ、それは……お前が裏切ったからだ!」


 七福神は突然カッと目を見開くと、ステッキを掴んでイシザキに向けた。


 銃声が轟き、わたしは小さく悲鳴を上げて頭を下げた。


 素早く身をかわして真正面からの銃弾を免れたイシザキは、無事な方の手で拳銃を握ると、七福神の脳天に二発お見舞いした。



「ぐわァッ!!」


 断末魔の叫び声を発したきり、七福神は動かなくなった。


 確認するまでもなく息絶えている。


 殺し屋としての彼の腕を目の当たりにし、感嘆と畏怖の念が沸き起こった。



「……殺すのが遅かったな」


 イシザキは拳銃を下ろし、独り言のように呟いた。