鈍い頭痛を覚えて、わたしは薄目を開けた。


 ……ここはバスルーム?


 ユニットバスとトイレの間に寝かされていた。


 身体を起こすと同時に、ジャラと鎖が鳴った。


 首輪から鎖が繋がっており、バスルームから出られないようになっていた。



「うわぁ……最悪」


 がっくりとうなだれてため息をつく。


 身動きすら封じられては、逃げるどころの話ではない。


 再びイシザキに檻の中に閉じ込められてしまったのだ。


 やはり、彼を欺くことなど不可能なのだろう。


 甘く考えていた自分が恥ずかしい。



 ……何か、振り出しに戻った感じ。


 それどころか、まずい状況になってしまった。


 イシザキを怒らせたのだから、命が危ない。


 でも、ヒカルを無視して通り過ぎることなど出来なかった。


 わたしは一体、何を期待していたの?


 ヒカルもヒカルよ!


 本気で逃げる気があるなら、用意をしてから来ればいいのに。


 長々と引き留めたら、イシザキが訝しく思うのは予想できたはずだ。


 わたしはヒカルの後先を考えない行動に怒りを感じ、それから自分の軽率さを後悔した。


 このまま、檻の中で生き続けるのかな。


 スクールにも通うなってことだよね……?


 絶望のあまり目の前が暗くなった。


 今までが平穏過ぎたのかもしれない。


 他の少女たちが拷問されたり、妊娠させられたりする中、わたしはいまだに無傷のまま……。


 イシザキが拷問を時間の無駄だと言っている以上、その心配は多分しなくてもいいはずだ。


 しかし、必要に迫られたらあっさり殺すほどの非情さも持ち合わせている。


 現に、彼の職業は殺し屋だ。


 ……分からない。


 イシザキの意図が、わたしを何の為に高値で買ったのかが。


 本人は実験の為と言っているが、それだって本当かどうかも分からない。


 色々と考えているうちに空腹を覚えた。


 あいにく食糧は手元にない。


 仕方なく、わたしは洗面所の水道水を飲んで空腹をごまかした。


 こんなことなら、昼食にカツ丼とかがっつりしたものを選べば良かった……。


 それから、いくら待ってもイシザキは姿を見せなかった。