顔はほとんど見えないけれど、
規則正しい寝息が聞こえてくる。


髪の毛の間からきらりと光る
ブラックダイアモンドのピアスが
やけに目立った。

そしてふと思い立つ。



ピアスに触れたい。

髪を耳にかけ、
耳を占拠しているピアスに、
指を滑らせたい。

いつか思った欲求が今
蘇ってきて。


それは気づいてしまうと
むくむくと膨れ上がり止まる気配をみせない。


ちょっとだけなら。

誰も居ないことなんか分かりきっているのに辺りを私は見渡した。


肝心のくろも余程疲れているらしく
全く起きる様子がない。


試しに小さな声で
「くろ」と呼び掛けてみても反応無し。


......いける。



私はそっとくろに近づき
髪に手を伸ばした。