くろが座ったことで
右半身に全神経が集まっていく。


ちらりとくろをみると
にこりと笑いながら首を傾げた。


「なんか.....修羅場?」




..................。






く、ろ、が、言、う、か、そ、れ。













くろのお日様に会って私がなんとも
思わないと考えてたのだろうか。



ほら、二人もなんだか混乱してるみたいだ。


しばし四人で固まっていると(何故かくろも)お日様がやっぱり最初に動き出した。



「あのっ。」

「はいっ。」

思いの外大きな声にびっくりして
こちらも同じように勢いがついてしまう。


「あの。
私、国見えみりと申します。
.....じゃなくて。
あの、その.......


ごめんなさいっ。」


「え.....。」



お日様が、深々と私に向かって
頭を下げた。


予想だにしない出来事に頭が完全についていかない。

何故、貴方が私に謝るの?


謝っているとしたら、何に対して?



困惑の眼差しを向けていると、
お日様......えみりちゃんが深々と頭を下げたまま、もう一度謝罪した。


「えみり先輩.....。」
事情を男の子は把握しているらしい。
心配そうに彼女を見守っていた。

そして頭を下げる肩は、
よくみると小刻みに震えていた。
何がなんだかわからずとも、
とにかく頭をあげてもらわなくては。


やっと動き出した頭で思い付く。
私が何か言わない限りこの子はずっと頭を下げたままでいるだろう。


「頭を、あげてください....。」

私も頭を下げる。

するとそれに気づいた彼女か慌てて
顔をようやくあげた。

たれ目がちの目にはうっすら涙さえ
たまっているようだった。
それでもまっすぐに私を見つめると、
申し訳なさそうな表情をするものの
しっかりとした口調で話し出した。


「私、この前貴方を傷つけてしまったと思っていました。
あんな顔をさせてしまったまま
帰してしまったことを後悔していて、
ずっと、気になっていました。
那都君から玄斗君の家に貴方が
あれ以来、きていないことをきいて、
胸が押し潰されそうなほど、
後悔しました。
理由はわからなかったけれど、
「私」の存在が貴方を苦しめてしまったような気がしたから。
だから、ずっと、ずっと謝りたかったんです。
いつの間にか傷つけるようなことを
してしまってごめんなさい。」




そんな。


傷ついたのも、帰ったのも、
来なくなったのも、
お日様が謝ることではないのに。

私が勝手にわかってたはずのことを
先伸ばしにしていただけなのに。


たった、あのインターホン越しの会話で勝手に傷ついた
私の心配も後悔もしてくれていた。



なんて.....心の優しい子。
なんて.....心の綺麗な子。


私は首をゆるゆると横に振ることしか、できなかった。