「また、作りに来てくれる......?」


くろが心のうちを読んだかのように
私の顔を、覗く。


「こんなので良ければ。」


断れない、断らない。



「ありがと。本当に美味しかった。
お礼にココアいれたい。」

「ありがとう。くろの作るココア、好きだよ。」


「ふふふ。うれし。」


そういってお皿をさらりと片付けるくろに甘えて、次は何を作るかに考えをチェンジさせた。












それから週に二度、くろのアトリエで
夕飯を食べるのが恒例になりつつあった。



「いらっしゃい。
今日はー?」


「こんばんは。今日はオムライス。」



「やたー。オムライス大好き。」


「だと思って。」

「えー。バレてるー。」


心底楽しそうにするくろを見るたびに
私は油断していった。

くろの中のお日様の存在を意識することが確実に減っていたのだ。

唐揚げ、ハンバーグ、グラタン、カレーライス、オムライス。

くろはお子様メニューが見かけによらず好きだ。


自分で作れるのは目玉焼きとお茶漬け。


料理のセンスが無いらしい。


くろを知る。

それは私にとって媚薬だ。

他に何も考えられなくなる。
いつの間にか次に何を作るか
考えながら作る自分がいた。


滑稽だと思った気持ちはかなり薄れていた。


どんどん普通の男の子の部分を見せてくれるくろにどんどんはまっていった。


オムライスを食べるくろは私のことを
少しは見てくれている、そう、錯覚を起こすほどには、自惚れていた。