確かに私は失恋した。

彼は居なくなり、帰ってくるなんて発想はもう頭の片隅にだってない。

彼は私のことをもう忘れたかもしれない。

でも、私は別に彼のことを忘れたいと思ったりはしていない。

彼が居なくなるなんて思い付きもしないくらい居ることが当たり前の日常を失ってしまって、現実を受け止めてきて彼への愛は日に日に薄れているけれど。

記憶まで消してしまいたいとは 、思えなくて。

いつかなくなってしまう思い出なら、
思い出される日が来なくなるかもしれないならその日まで大事にしまっておきたい。

二度と開くことのないアルバムになったとしても、捨ててしまいたくない。



そう、思っていて。


だから彼が残していった
マグカップも、お箸もお皿も。

彼が要らないというのなら、
私が貰いたい。
そう自然に思っている。

捨てるのは簡単だ。

でも捨ててしまったら、
手放してしまったら
二度と拾えない。

彼を思い出せるうちは
苦しんだって良い。

そう結論付けて、
こうして思い出している。

いつしか物には効力がなくなって、
どれをみても思い出さない日が
多くなる。

そのことの方がきっと今より切な
くて 寂しいと、思う。


前に進むには忘れることは重要で、必要だ。


でも、だからこそ、私はマグカップ達を捨てるきにはなれなかった。