あの日と同じモッズコートにスキニー、ショートブーツ。
漆黒の髪、瞳。


腿に肘をおき、前傾姿勢で手を組み
斜め下を伏し目がちに見ていた。



白い息を吐き出して一瞬。






こちらをみた。




私は心臓が飛び出てしまうかと思うほどに驚き、肩を震わせた。


私は一本道の反対側から彼をみつけ、少し遠目に立ち斜めから見ていたが、それでもどう考えても近すぎた。



ただの住宅街にある道路と公園。


しかもなにかあるわけでもないところに
良い大人の女が明らかに自分のことをみて立っている。


気持ち悪いと、認識されてしまったに違いない。


見つかってしまった。

ストーカーだと思われたかもしれない。

いや、実際に会いたいと勝手に思って行動していたのだから、そう言われても最早仕方ないのかもしれない。

けれどすぐに視線はとかれ
あの日と同じように
空を見つめていた。

確かに目があったとき
黒い青年の目は少し見開いていた。

でも、それだけだった。


ほっとすべきことであるのに、
何故かむっとしている自分には気づかないふりをして、空をみるその子をみることを再開させた。