その日のそのあとの記憶が
曖昧な程、僕は密かに落ち込んでいた。


落ち込んだ気持ちで作った
作品は、何故か
ものすごい勢いで売れた。

それでも僕の心は晴れない。

ここ数日、カッコいいと
言って欲しくて、
新しいジャケットをおろしてみたり、
新作のピアスをもう一つつけたり
無駄に髪の毛セットしてみたり、
光のこと、
駅まで迎えに行って、
荷物持ってみたり、
ココアじゃなくてコーヒーを飲んでみたのに。


何も成功しなかった。



新しいジャケットは
光は似合う、くろらしいねって
お姉さん笑いが眩しくて
ぎゅうぎゅう抱きついた。

...失敗した。



新しいピアスはもう一つ穴を開けたことで心配そうな顔されてしまった。
大丈夫、光に、かっこいいって
言われたかっただけだとは
言えなかった。

髪の毛セットしたら、
ものすごい不安そうな顔で、
う、う、浮気を疑われた。
僕、どんだけ今まで
ボサボサだったんだよ...
逆に泣いてしまって
光はそのままのくろが
可愛くて、好きだよ疑ってごめんねって
謝ってくれてしまった。


失態。


駅まで迎えに行っても
すごく驚いて、嬉しそうにして、
いけるかもしれないと
思ったのに。
それでも光はお礼を物凄い可愛い顔して
言ってくれただけだった。

いや、いつもならそれで充分だけど、
僕の心は一瞬浮上してまた沈んだ。


どうしたら、カッコいいって
いってくれるんだろ。

ため息を一回隠れて吐いたあと、
この前のアクセサリーが
結構な値段で売れたことを
光に報告して、
光がいくらで売れたのかと
(おそるおそる)聞いてきて、
答えると固まってしまったのが
可愛すぎたのに、
いつもならまた、
頑張ろうって思うのに。


その、会話の途中で
流れていたニュースがCMに変わる。




いくつかのCMのあと、
また、例の「佐藤くん」のCM。

口がどうしても尖る。
だって、光、見てる。

光が焼いてくれた目玉焼きを
お行儀悪くつつきながら、
思わず口が滑った。

「光は、ああいう感じが好きなの?」


「へ?」

キョトンとする光。

くそ可愛い。

それに比べて
僕は小さい、僕はどうせ心が狭い。


だって、でも、
やっぱり悔しい。


光は僕に可愛いと言えども、
カッコいいなんて
言ってくれない。


一度も、言ってくれない。