何かの、間違いだろう?


 そう思う自分と、


 何となく想像できてただろう?


 こう思う俺がいる。

 あいつは友だちの男を盗るような女じゃないと信じたい。

 岡崎美希は、真面目で打たれ強いふりをする、

 心の綺麗な女の子だと思ってた。

 本当はショック受けてるのに、それをひた隠して

 強く前向いて歩こうとするから、

 痛々しくて、どうにかしてやりたかった。




 顔って、そんなに大事か?

 人の生き方を左右するようなものなのか?

 俺は確かに整った顔の方がいいと思うけど、

 顔なんか大して重要には思えない。

 でも気にしてる人間にとっては、重要なんだと思う。



 高校に入って、唐突に岡崎は変わった。

 顔が変わった途端に、別人のように明るくなって、

 友だちも積極的につくるようになった。

 今までは俺と新山を中心とした小規模な世界の中に身を置いていたのに、

 高校一年の頃は部活をいくつも掛け持ちしてた。

 昼休みになると弁当を他のクラスまで食いに行くくらい社交的になっていた。



 二年のときは生徒会役員になって忙しく動き回り、

 それが終わると落ち着いた。

 何故か、部活も全部やめた。

 空手部のマネージャーをやめたときには、かなり驚いた。

 やめないだろうって、思ってたんだな。



 見てたんだ、俺は。



 理不尽な奴らから守ってやらなきゃと思って見てた。

 もう俺の力なんかいらなくなったことには、とっくの昔に気づいてた。




 それでも俺は、見てたんだ―――――