ウチは迷いながら、星哉クンに電話した。

 星哉クンは部活中みたい。

 大会が近いから、休みの日も毎日練習。

 どうしよう……こんなときに話しちゃっていいのかなぁ。

 迷ってるうちに、留守電になってしまった。


 「ホッシー……ちょっと、あの……大事な話しがあるんだっ。
 伝言聞いたらかけて」


 あんまり暗くなんないように言ったけど、ぶつぶつ言葉が切れた。

 言わないっていう選択肢があったのに、ウチは使えなかったよ………





 「こんばんは」


 部活のあと電話くれた星哉クンは、ウチの家まで来てくれた。


 「ごめんねホッシー」

 「いいって。通り道だし」


 部活のアトなのに、星哉クンは爽やかに笑う。


 「お腹空いてない?」

 「何にもいいから。気ぃ遣うなよ」



 ………優しい。



 「ありがと」


 ウチは準備しておいたクッキーと紅茶だけを部屋に持って行った。


 「良かったら食べてね」

 「手づくり?」

 「うん……」

 考えるのイヤでつくった。


 「いただきます」


 星哉クンがクッキーに手を伸ばし、口に入れる。

 サクッと軽い音がした。


 「新山は料理うまいな」


 ズキンて、心臓が強く打った。

 まるで、棘が刺さったみたいに。




 『ごちそうさま。マジうまかったよ。食いきれなくて悪いな。
 けど基本、俺は食うの好きじゃねぇから、普段から小食なんだ』




 ホントに好きだって思ってくれてるんだったら、

 ウチのつくったお弁当、全部食べてくれたんじゃないのカナ……