private lover / another view

 教室に戻ると、新山はいず、代わりに女を侍らせた彩並がいた。

 新山とつき合う前と何ら変わらない光景だ。



 キツイな、これは。



 俺は新山に電話を掛けた。


 「何?」


 鼻にかかるしみったれた声が受話口から聞こえる。


 「どこにいる?」

 「道の上」

 「そこまで行くから、詳しく教えてくれ」


 恋多き人生を歩む新山奈々は失恋が初めてじゃない。



 でも俺は…………

 相当堪えてる。



 新山は近くにある公園の名前を告げて、電話を切った。

 HRに出るとあとが面倒になるから、

 早々に教室を出て新山のいる公園に向かう。


 あれは……新山か?


 両手使って「いえいえ」なんていう感じのポーズをして、

 私服姿の茶髪と喋っている。

 遠目に見てるから声は殆ど聞こえないが、

 新山の少し大げさな動きから見て、

 トークは弾んでいるようだ。



 俺が行ったら邪魔か?



 男が新山の腕をつかむ。

 それをさり気なく払う新山を見て、

 割り込むことを決意した。


 「いいじゃん、ちょっと。ね? おごるよ」

 「もう来るから……あ! ホッシー!!」


 新山が俺に気づき右手を高く上げて振り始めた。

 俺も片手を少し上げて反応すると、男は新山から遠ざかる。

 新山はそれを見て安心したのか、俺の方に向かって駆けて来た。


 「早く助けてよぉ………」


 口をヘの字に曲げて新山が俺を見上げる。