、床を赤く染めた。
日が傾きかけている。
今日が終わり、また苦痛の日々を繰り返す。
病んでいたのは闇か、私の心か。

子供の笑い声が空に響く。
私はそんな笑い方すら知らなかった。
いや、しっていたのかもしれない。
だが、分からない。
分からない。
嘆きは枯れない。
渇いたのは涙。

子供の声が遠ざかる。
私は目を閉じ、自ら闇の湖に身を投げた。
沈んでいく身体に鳥肌が立ち、目眩がする。
全身から汗が吹き出し、イヤダイヤダと訴える。
知らない。
こんな痛みを私は知らない。
知らない。
こんな苦痛を私は知らない。
知らない。
こんな悲しみを私は知らない。
知らない。
こんな解放感を私は知らない。

それは当たり前。
だってまだ生きている。
まだ私は檻の中。
枷に繋がれた罪人。
それ以外の何者でもないのだから…。

目を覚ますと辺りは闇に覆われていた。
ドアの隙間から光が漏れている。
まだそこまで夜遅い訳でもないらしい。
私はベッドから起き上がり、空腹を満たしに、一階にあったバーに向かう。

私はカウンターに腰掛けた。
スラリとした中年のバーテンダーが注文を聞いてくる。
私は適当に指差す。
何でもいい。
酔えば一緒だ。
アルコールが入っていればいい。
何もかも忘れて眠りにつければそれでいいのだ。
どうぞと言ってバーテンダーが私の前に毒々しい色の酒を置いた。
私はそれを躊躇せずに飲み干す。
不味い…
だが、それが私にはちょうど良い。
所詮は苦痛を味わう生き物なのだから。

何杯目かのお酒を注文したとき隣に男が座った。
まだあどけなさの残る若者。
「お一人ですか」
彼は私に話し掛けた。
私は 何も返さない。
「僕はずっと貴方を捜していたんですよ」
私をフォルセスだと知って話しかけてきたのか、と思った。
が、どうでもいいことだ。
邪魔ならば殺せばいいし、そうでもなければシカトすればいい。
それが答えだ。
「貴方に聞きたい事があるんです。トドィス王国の事で」
不快だ。
トドィス…そんな国名聞きたくない。
脳の中で暗い渦が回り始めた。