そんな訳がない…
だが、あのとき、彼女を助けられるような人間はいなかった。
確実に殺したのだから。
「お前は本当にミルティなのか?」
馬鹿げた質問に馬鹿げた答えが帰ってきた。
「違うわ。今はアーティアって言うの。だって私はもう人の子じゃないもの」
なんなんだ、何かがおかしい。
驚異的な違和感を覚える。
こいつ本当に…
「貴女は知ってる?神様が降りてくる事」
「!」
「私には降りて来たんだよ」
そう言ってクスクスと笑う。
「じゃあ今日はもう行くね。明日…また殺しにくるから」
アーティアは溶けるようにその場から消えた。
冷たい汗が身体を冷やすのを感じた。


一部始終見ていたジャックに質問攻めにあう前に、こちらから説明することにした。

「彼女の名前はミルティ。昔あの戦争を起こした者の内の一人だ。」
「え!」
驚くジャックを横目に私は昔話を続けた。


トドィス王国…それは私が住んでいた王国。
そこの騎士にして主兵長だった私に、ある日任務が来た。
国境付近で不穏な動きがあるとの事で私はそこに向かった。
そこで彼らに会った。
トドィスに私に怨みを持つ者達に。

そしてあの戦争が始まった…
私達は全滅したが、敵も壊滅した。
私は平穏な暮らしを取り戻した。
ゼノと共に海の見える街で一緒に暮らした。
この平穏は何時までも続くと思った。
だが、すぐにそれは終わりを告げた。