涼ちゃんの元へ、小走りで戻るあたし。


「何やっとんじゃ、お前は」


涼ちゃんは、苦笑いしながら迎えてくれた。


「ちゃんと持っとらんと……」

「ねぇ、涼ちゃん……」


あたしは、涼ちゃんの言葉をさえぎって話し出した。


「橘先輩って……素敵じゃねぇ……」


先輩が去っていった方向を眺めながら、あたしは言った。


「あたしも……あんなん、なりたいなぁ……」

「あははっ、無理じゃ、無理!」


涼ちゃんは、そんなあたしを軽く笑い飛ばす。


「さくらと橘じゃあ、元が違うじゃろ」


あたしのほのかな憧れを、いとも無残に打ち砕く。


「もうっ! そこまで言わんでもいいじゃんかー!」


手を振り上げるあたしに、涼ちゃんは大袈裟に身をひるがえして逃げ出した。


「こらっ、待て! 涼介ーっ!」

「あははははっ、嫌じゃー!」


逃げる涼ちゃんを追って、あたしも校舎へと入っていく。