コイスルハナビラ SAKURA

あたしと麻紀ちゃんは、今、旅館の廊下を歩いている。

この旅館の顔でもある温泉に、これから入りに行くところなんだ。

夕飯までまだ少し時間があるから、その間に入っちゃおうと思って。


あの後━━━

ホールでの歓迎を受けた後は、遅れてやって来た叔父さんに促されて、受付でチェックインをした。

あたしと麻紀ちゃんは相部屋。

部屋は305号室、『あやめの間』。


叔父さんが言うには、本当は、部屋を1人1人用意したかったんだけど……

あたしがお世話になることは突然決まったから、用意出来なかったんだって。


でもね、あたしは全然かまわなかったんだ。

逆に、修学旅行みたいで嬉しいくらい。


それに……

1人で夜の闇に包まれたら、また涼ちゃんのことを思い出して、辛くなりそうだから……