「ほらほら、2人とも長旅で疲れてるでしょうから」
そのとき、あたしたちの後ろから声が聞こえてきた。
それは、なんとなく懐かしいような、優しい声だった。
「叔母さん、お久しぶり!」
麻紀ちゃんは笑顔で振り返る。
そこには、30代後半くらいの女性が立っていた。
他の従業員さんと同じ着物を着ているんだけど……
他の人よりも、どことなく上品に見える。
「は、はじめまして! 綾瀬 さくらです!」
あたしも振り返り、少し緊張しながら挨拶をする。
叔母さんと呼ばれた女性も、ゆっくりと頭を下げた。
その仕草は、長年この業界に携わってきたということが一目でわかるくらい、堂に入ったものだったんだ。


