コイスルハナビラ SAKURA

3人を乗せた車は、看板が示す通り、100メートルほど進む。

すると、右手に小高い丘が見えてきた。

その丘の上にそびえる、少し古く、大きな建物。

でも、上品で良い味が出ている建物が、麻紀ちゃんの叔父さんの経営する旅館だった。


車は道路を外れ、旅館への坂道を登る。

そして、建物の大きな入り口で、ゆっくりと停車した。


「ここで、降りちゃっていいよ」


あたしたちは車から降りると、荷物を引っ張り出す。


「先に入ってて、いいからね」


そう言うと、叔父さんの車は建物の裏手にある駐車場へと消えていった。


「やっとついた~!」


麻紀ちゃんが大きく背伸びをする。


「長旅だったねぇ」


あたしは苦笑いしながら、そんな麻紀ちゃんを見た。

敷地内は、旅館の名前が示す通りたくさんの笹が生えている。

それらは、あたしたちを歓迎するかのように風で揺れていた。