「な~に、バカ言ってるのよ」


不意に頭の上から声が響く。

見上げれば、そこには切符を手にした麻紀ちゃんがいた。


「あんた……米俵って、60キロくらいあるんよ? そんなの担げないって」


麻紀ちゃんは笑う。


「でも、麻紀ちゃんなら!」

「あんた……人を何だと思っとるん?」


呆れたように言う麻紀ちゃん。


「まったく、さくらは……はい、これ」


そう言って、苦笑いを浮かべた麻紀ちゃんは、あたしに新幹線の切符を手渡してくれた。


「ありがと、麻紀ちゃん……でも、本当に切符代はいいん?」

「うん、気にせんといて。ちゃ~んと交通費は出るけぇね」


親指を立てる麻紀ちゃんに、あたしは安心感を覚えた。


「……って、こんなのんびりしてる場合じゃないんだって! 行くよ!」


言うが早いか、麻紀ちゃんは再び走り出す。


「あ、ちょっと待ってよー!」


あたしは慌ててバッグを拾い上げると、麻紀ちゃんの後を追って再び走り出した。