「橘先輩……!」
彼女は微笑むと、そっと地図を渡してくれた。
地図は、またあたしから逃れようと、手の中で暴れ続けていた。
目の前の女性、橘 恭子(たちばな きょうこ)は涼ちゃんと同じ3年生。
あたしが1年の時に県外の高校から転入してきた。
うちの高校の転入試験は難しくて有名なのに、あっさり入ってくる所が橘先輩の聡明さを表していると思う。
でも、橘先輩の凄さはそれだけじゃない。
スポーツをやらせても優秀。
部活は剣道部だったんだけど、凛とした声で竹刀を振るう先輩は、女のあたしから見てもカッコ良く見えた。
顔も綺麗で、その長い艶やかな髪は、女の子からも憧れの的だった。
……と、ここまでそろったら、普通は性格は悪いのだろうけど……


