「……ところで、麻紀ちゃん」
つばきは、不意に向き直る。
その真剣な表情に、麻紀の胸は一瞬強く脈打った。
「あの子……昨日、雨の中びしょ濡れで帰ってきたんじゃけど……何があったのか知らない?」
「昨日? さくらが?」
思わず、驚きの声が出る。
「あの子……ご飯も食べんで、夕べから部屋にこもりっぱなしなんよ……」
眉間にシワをよせ、つばきは悲しげに言った。
「だって……昨日は涼介に会うんじゃって、あんなに嬉しそうに……」
伏し目がちにつぶやく麻紀。
しかし、次の瞬間、何かに気付いたかのようにハッとした表情を浮かべた。
「すみません、おばさま! ちょっと、お邪魔します!」
言うなり、麻紀は玄関の中に入り込む。
靴を脱ぎ、玄関を上がり、さくらの部屋へと走り出しす。
「さくら━━━っ!」
麻紀は、叫んでいた。


