コイスルハナビラ SAKURA

お風呂から出たあたしは、部屋着に着替えると自分の部屋に入った。

外はすっかり暗くなっている。

あたしは電気もつけずにフラフラとベッドまで進むと、ドサッとうつ伏せに倒れ込んだ。

どこかで、犬が遠吠する声が聞こえてくる。


「終わったんだ……」


横になって気が緩んだのか、不意にあたしの瞳に涙が浮かんできた。



泣かない━━━!!



あんなやつのためなんかに泣くもんか!!


あたしは仰向けになり、両腕で瞳を押さえる。

下唇を強く噛み、強気で涙をこらえようとする。



でも━━━



一度出た涙を抑えることは出来なかった。


あたしは泣いた。

声を上げて泣いた。


今までの涼ちゃんとの思い出は、何だったの……?

学校、公園、映画館、そして涼ちゃんの部屋……


様々な思い出がよみがえる。


あたしは、ずっと涼ちゃんだけを見つめていた。



でも……



涼ちゃんが見つめていたのは……



「あたしじゃ……なかった……」



あたしと話していた時も、笑っていた時も、きっと涼ちゃんの心には橘先輩がいたんだ……


そう思うと、もう涙を止めることは出来なかった。