何かの間違いであってほしい!


あたしは、祈るような想いで手に力を入れる。

スライド式の扉は拍子抜けするほど、いとも簡単に開いてくれた。


フローリングの部屋。

テレビやベッド、テーブルの上の飲みかけのコーヒーなど、涼ちゃんの生活が感じられる。

あたしは息を飲むと、一歩、中に踏み出した。


見たところ、特に変わった様子は……


「ん……涼介……お客さん?」


そのとき、不意にベッドの中から声が聞こえた。


毛布がゴソゴソと動いたかと思うと、女性がゆっくりと上半身を起こす。



あたしは……

その女性に見覚えがあった……



「橘先輩……」



あたしの中で、何かが音を立てて崩れていった。