「……はい?」
少しだけ開いた扉の隙間から現れた顔。
それは、間違いなくあたしの大好きな涼ちゃんだった。
「涼ちゃ~ん!」
「うわっ! さくら!?」
驚きの声を上げる涼ちゃん。
その驚きようは、あたしの予想を超えていた。
「何よ、その反応……」
「だってお前、いきなり来るから……」
涼ちゃんは、無造作に頭をかいた。
「涼ちゃん、とりあえず中に入れてよ。雨で濡れちゃうよ」
「い、いや、でも、散らかってるから……」
「そんなの、気にせんよ」
あたしは、半開きの扉をグイッと引っ張った。
「うわっ、ちょっと、お前……!」
扉をつかんでいた涼ちゃんは、不意の出来事に大きくバランスを崩す。
転がりそうになりながら、裸足のまま外に飛び出してきた。
「さくら、お前なっ!」
「あはは、涼ちゃん何でそんな格好なん?」
声を荒げる涼ちゃん。
でも、あたしは涼ちゃんの格好がおかしくて、思わず笑ってしまった。
「お前が、扉を引っ張ったからじゃろ!」
「あはは、違うよ! その格好もそうだけど、あたしは何でそんな格好なのかを聞いてるんよ」
部屋から転がり出た涼ちゃんは、トランクス一枚という姿で両手両膝を地面に付けていた。
「具合悪いんじゃったら、もっと暖かい格好せんと……」
あたしは笑いながら、開け放たれた玄関に、ふと視線を向けた。


