コイスルハナビラ SAKURA

2階の角部屋、205号室が涼ちゃんの部屋。

表札は、まだ出ていない。


いつかここに涼ちゃんの名前……

そして……あたしの名前も並ぶのかな……


そんなことを思いながら扉の前に立つ。

あたしは、壁に備え付けられた呼び鈴に手を伸ばす。


「~~~っあ~!」


あたしの指は、呼び鈴のボタンの数センチ手前で停止していた。


「う~……なかなか緊張するもんじゃねぇ……」


頭の中が真っ白になる。

あたしは、そっと胸に手を当ててみた。

あたしの心臓は、まるで嵐のように激しく高鳴っている。


すぅ……

はぁ……

すぅ……

はぁ……


何度か深呼吸をして、あたしは気持ちを落ち着けようと努力した。


「よ、よし……!」


それでも、まだまだ騒ぎ足りない心臓は無視することにして、あたしは覚悟を決めた。

恐る恐る手を伸ばす。

そして、人差し指に力を入れてボタンを押した。