「あたし、その時、何になりたいって書いとる?」
お母さんは少し驚いた様子を見せながらも、あたしに答えてくれた。
「さくら……さくら……あ、あった。……うん、学校の先生って書いとるわね」
「先生……」
「ほら、2年生の時、学校に行きたくない! って泣いたの覚えてる?」
「……うん」
「その時、担任の先生が、毎日うちに寄ってくれて……」
「……うん」
「真剣にさくらと向き合ってくれて……」
「うん……それで、あたしはまた学校に行けるようになったんよね……」
その時のことが、懐かしく思い出される。
「それで、その先生みたいになるんじゃ~! って、あなた言ってたんよ」
そうだ……
その時あたしは、教師になろうと思ったんだ……
あたしの心の中の壁は、完全に崩れ去っていた。
「……ありがとう、お母さん! ……あたし頑張るけぇね!」
そう言って、あたしは電話を切った。


