コイスルハナビラ SAKURA

その後、猫さんはこの仕事の細かなアドバイスを、あたしにしてくれた。


まず、お客様と接する時は、出来る限り声を出さないようにすること。

これは、お客様の夢やイメージを壊さないようにするため。

声のかわりに、体を使って表現するんだって。


「最初は難しいかもしれないけど……慣れちゃえば大丈夫よ」


そう言って、猫さんは親指を立てる。

この猫さんに言われると、出来そうな気持ちになれるから不思議……


「でもね、どうしても話さなくちゃならない時もあると思うの。そう言う時は……」


猫さんは指をピッと立てる。


「そう言う時は、そのキャラの鳴き声を、語尾につけて話すといいのよ」


そう言って、お手本を見せてくれた。


「……オナカすいたニャ~」


うつむき、頭を左右に振り、オナカをさすりながら言うその言葉。

それは、思わず抱きしめたくなるくらい、とても可愛く見えた。


「どう? これならイメージ壊れないでしょ?」

「はいっ!」

「うん……じゃあ、ちょっとやってみて」

「はいっ!」


あたしはオナカに手を当てた。


「……」


そして、そのまま黙り込む。


「……あれ? どうしたの?」

「あのぉ……」


首をかしげている猫さんに、あたしは恐る恐る言った。


「パンダって……なんて鳴くんでしょう?」

「あ……」


2人の間を、一陣の風が抜けていった……