――生まれてから一番最初の記憶は振り上げられた掌だったと思う。





蝉が鳴いている。
強すぎる太陽の陽射しが光線のように幼い旋毛を容赦なく照りつけている。柔らかく一本一本が細い髪の毛は大人のものと比べると色素がだいぶ薄く、太陽に翳せば透明に透けて見えそうだった。首筋にまとわる髪の毛を鬱陶しそうに払いのけ、その拍子に顎から玉のような汗が地面目掛けて飛び散った。



青はうずくまり、じっとしていた。足元を黒く大きな蟻がちょろちょろ歩き、ぴんく色の小さなサンダルから覗いた足の指をまるで険しい山道を歩いているかのように登ったり下ったりして見せたりもした。だけど青は動かずじっとしていた。



脚を抱えるように膝に手を付き、頭をうなだれて眼をきつく瞑り、どんどん威力を増してゆく太陽からの迫害にすら青は身動き一つ取らなかった。



バタン。背後でドアが閉まる音がして、青の肩が異様なまでに大きくびくっと揺れた。



心臓が早鐘を打ち、その速さに気持ちが悪くなる。膝小僧に置かれた掌に力が入り、薄い皮膚に爪が食い込んでゆく。



しゃりしゃり。砂をなじる音がして、青の体を大きな黒い影が包み込んだ。