君が為


「べつに、謝るようなことじゃありません。だって、藤堂さんは何も悪い事なんか言ってないじゃないですか」


「え……」


今度は藤堂さんが目を丸くする。
ポロリと一つ、金平糖を畳に落とした。


「藤堂さんの言う通りですもん。私、皆さんよりも全然子供だし、きっと足引っ張ってお荷物になっちゃいますもん。だから、少しでも皆さんに迷惑かけないように……大人しくしてます」


藤堂さんの言葉に従います、と最後に付け加えて、今度こそ私は退室した。



晴れた空、きっと今日も爽やかな風が吹く。
私は部屋を出る前に盗み見た藤堂さんの顔を思い出した。


何かに驚いたような、呆れたような、少し嬉しそうな……いろんな感情が混ざった、きっとそうそう拝めないような顔をしていた。


思い出して、少し笑う。


またあの顔を見る頃、自分は一体何をしているのだろう。


そんな事を思いながら、私は湯のみが二つ乗ったお盆を手に廊下を歩いた。