「承知しました。では、今日にでも準備をしておきますね」
近藤さんに対して低く頭を下げると、私は退室した。
何気なしに空を見上げると、もう月は真上に上がっていた。
随分と時間が経っていたんだな。
軽く肩を回して、長い間座っていた所為で固まった筋肉を解すと、廊下を静かに歩き出した。
歩きながら、先ほどの近藤さんの話を思い出す。
話を要約するとこういう事だ。
諸国を脱藩した尊皇攘夷浪士たちの取り締まりをするようにと、大阪奉行所から依頼され、近々大阪に行くことになった。
そして、芹沢さんの強い希望により私もそれに同行することになったのだ。
私はまだ、剣の腕も未熟だし、この屯所以外の景色を知らない……言ってみれば、親がいないと生きられない子供と同じだ。
私が大阪に同行して、何の役に立つとも思えないけれど……。
せっかく芹沢さんが推薦してくれたんだ、少しでもあの人の想いに応えたい。
私は両手で小さく頬を打つと、自室までの道のりをまた、静かに歩いた。

