先輩と後輩の私。


先輩にありえないくらいの大声であいさつしたこと。

先輩と一緒にやった交流会のレクをやったことも。

先輩に見てもらったことも。

先輩にストラップをもらったことも。

先輩にあげたクッキーも。

先輩の癖も、先輩の好きだったものとか、全部を。


なにより先輩と、過ごした部活を。
先輩と、一緒にやったこと、全部を。



先輩が、忘れているようなことも、忘れちゃったことも。
先輩が、いなくなっても、もう会えなくても。


忘れない。忘れたくない。忘れてやらない。



私はしばらく先輩に頭を撫でられながら泣いていた。



「……彰人ー!!」


「ぁ…」

「っ、先輩、すいません、行ってください。ほんとに、ほんとにいままでありがとうございました。いつも、迷惑かけてばっかりですいませんでした」


「いや、そんなことないよ、俺ら3年もいろいろ中学生に教わったしな」
と言って先輩は眩しいくらいの笑顔で笑ってくれた。



「先輩、ひとつだけ、我侭言ってもいいですか」

「ククッ、なにそれ。さくらのくせに生意気」

「すいません、でも、出世払いってことで」

「さくら、それ意味違うから」

「先輩、何ヵ月後でも、何年後でも、何十年後でも、死ぬ寸前でも、いいから、
あぁ、こんなやつもいたなぁって、それだけでいいから、私のこと思い出してください、それが私の最初で最後の我侭です」


「…さく…」

「じゃあ、先輩、今まで本当にありがとうございました!大好きです!
私、絶対先輩のこと忘れません!!!3年間お疲れ様でした!ほんとうにお世話になりました!!!」

とびきりの笑顔と大きな声で私はそういうと、先輩に深く礼をしてから、走って、駅まで向かった。

涙が零れ落ちないように、こらえたけど、やっぱ無理だったなぁ。
先輩に気付かれてはいなかったかなぁ。
きっと勘のいい草先輩だから、強がりだってことも分かってたんだろうなぁ。


帰り道、電車の中で、また皆と泣いた後は、思いっきり笑った。
ほんとに楽しかったねって。
あんなにいい先輩と出会えて私たちは幸せだったねって。