『…ハァ』




あのあとすぐに、家に戻ってきてしまった





「最後くらい、俺に奢らせて」なんて言いながら、私が飲んだホットココアは彼が出してくれた




ありがとう、なんて笑っておいたけど、本当は泣きたくて仕方なかった




泣きそうになるのを堪えて平気そうにする私と、困ったように私に気を使う啓祐



高校に入ってすぐ、啓祐と私は同じクラスで隣の席。

喋ってるうちに好きになってきて、6月頃に彼から告白されて付き合った




――正直、好きだけど無理だと思ってたから同じ気持ちで嬉しくて、泣きながら抱き着いたんだっけ。



キスも全部、啓祐が始めてだった



恋人と過ごす始めてのクリスマス、水族館、遊園地、数え切れないくらい二人で過ごしたよね







…2年7か月の、高校生活の青春を、簡単に忘れる事なんて私にはできないよ




『ウッ…』


思えば、少し前から啓祐の様子が可笑しかったんだ




二人で一緒にいた時もどこか浮かない様子だったし、少ししたことで苛々して喧嘩だって多かった


でも、また仲直りできるなーっ、なんて思っちゃって平気だと思ってたんだ。


…平気だと思ってたのは、私だけだったのかもしれない



記念日に一緒に過ごしてくれなくなった

メールも来ない日だってあった




数か月前から別れの合図があったのに、気付く事ができなかった





――まだ、大好きなのに



泣いても泣いても、啓祐は帰ってこない…