好きな人。


「ったく、めんどくせーよー」

「だねぇ」

「お前やってねーだろー」

「終わったらやるから、さ」

「ちっ」


そんな会話の間に、ぱち、ぱち、とホッチキスの音が聞こえる。


「………」

「…………」


なんとなく、会話が途切れる。



観星を見ると、あの言葉がループするのだ。

だけど観星は、そんな様子を全く見せない。

観星の中に、恋心があるなんて感じられない。



あたしから話すことなんてできない。

だけど、この静かな空間は居心地が悪すぎる。







「槇原」

「はっ!?はいっ!?」

声をかけられたのが急過ぎて、思わず声が跳ね上がる。

「日付、書いてない」

「え?あ…」

そのとき初めて気づく。

予定、出席人数、欠席人数、そんな事はちゃんと書いてあるのに、肝心の日付が書いてないんだよ、あたし。

「…、今日、何日だっけ?」

「2月……、13日」

「あ、そっか」

日誌に、「2月13日」と書きいれる。



「そういえば明日………、バレンタインだね」

「そうだな」

観星はぱち、ぱち、とホッチキスを止める手を止めずに、そう答える。


この流れで、とあたしは思った。

知りたくなかった。

でも、知りたかった。




「観星ってさ、好きな人とかいんの?」

「……、いるよ?」

案外アッサリと、でも、少し躊躇いながら観星は答えた。