一人暮らしで誰も止める人がいないから、私のブツブツと呟く危ない行為は否応なく続いていく。

そうやって、私の中の天使と悪魔が戦っていた時だった。
ガン見していた携帯が、また震えた。

―――― 久しぶりに逢わないか? ――――

はい?

ちょっと待ってよ。

逢う?
タケルと?

なんで?
おかしいでしょ?

何で別れた女とまた逢うのよ。

そうか、よりを戻したいのか?

イヤイヤ、駄目駄目。
こんな言葉にほいほい吸い寄せられていったら、都合のいい女になるに決まっている。
せいぜい遊ばれて、そんでまたタケルに好きな人ができたらすぐにポイってことになるんだから。

そうよ、騙されちゃだめなのよ。

だけど、もしかしたら別れたことを後悔しているのかもしれないよね?
逃がした魚は大きかった?

そうよね、そうよね。
だって、私ってばとっても甲斐甲斐しかったでしょ?
いつだってタケルのことを想って行動してたんだから。
そんな私と別れたことをきっと凄く後悔しているんだよね。

イヤイヤ、だから駄目だって。
そんなの今更じゃない。
どの面下げて逢いたいなんていえるのよ。

「ああーーーっ!」

終いには声を上げてしまうのだけれど、そんなことをしても答がみつかるはずもない。


結局、一日中携帯に向けて独り言を漏らした結果、日が暮れた。

「もーーー!! 考えるのやめたっ。消去!」