部屋の中に響く、扉が閉まる音。その音を耳にしたダレスはフッと溜息を付くと、彼女があのような表情を作ってくれるのなら、たまには弱音を吐いてもいいのではなかと思いはじめる。
変わった。
お前は違う。
著しく変化した。
では、何を切っ掛けで?
現在の姿をヘルバが目撃したら、そのように言われるかもしれない。確かにダレスはフィーナと出会い、少しずつだが変化が生じてきている。最初は「巫女様」と相手を見て接し恭しい態度を取っていたのだが、今はどちらかといえばお節介焼きの親友というべきものか。
変わりつつある自己の分析をしていると、ヘルバに頼んだ出来事と自分の正体に付いて話せなかったことを思い出す。タイミングを見誤ったのか、それともまだ話してはいけないという思し召しか。どちらにせよ、このヘルバの件に付いては早急に伝えないといけない。
確実に時間は経過しており、その時を迎えればダレス本人もどうすることもできない。また周囲の反応も気になるので、本格的に制御不能になる前に彼女の前から姿を消す予定だ。
内に秘めているモノに対しての解決の術を与えてくれる人物は、扉が閉まる音と共に立ち去っている。それなら後を追い全ての真相を話せばいいのだが、フィーナに言われたことを素直に実行しなければいけないという彼が持つ生真面目な一面が影響し、脚が動かない。
彼女の反応が怖いという不安感に苛まれているのか、ダレスの声音は珍しく弱弱しい。同時に甘い期待感もないわけではないが、考えれば考えるほど彼の心に暗い影を落とすのだった。
◇◆◇◆◇◆
ダレスと別れたフィーナは自室に篭り、彼から新しく借りた本を読んでいた。現実には有り得ない〈魔法〉という設定に惹き込まれ、頁(ページ)を捲る手が止まらない。次は何か次はどうなってしまうのか、物語は彼女の好奇心を刺激し現実の世界から創作された世界へ彼女を誘う。
それだけ〈魔法〉の力に魅力を感じ、ダレス同様に自分も〈魔法〉使用できたらどれほど面白いものかと考えはじめる。その反面、この力の悪い面も目に付いてしまう。確かに〈魔法〉が使用できればこれほど便利なものはないが、この力は呪文と呼ばれる言葉を詠唱すれば使用できる。


