「他の種族は、どうなのかしら」
「と、申しますと?」
「有翼人以外の種族も同じように……」
「同じでしょう」
「……やっぱり」
「はい。哀しいことに」
ダレスの父方〈竜〉は己が持つ力の強大さを理解しているので「傍観者」という立場を取り続けていたが、ダレスの母親の件で状況を変化させた。現在でも傍観者の立場を貫いているが、何かの切っ掛けが齎された場合、傍観者を捨て人間に襲い掛かってくるかもしれない。
彼等は温厚な一面が強い種族だがいざ感情を爆発させた場合、力を抑えつけられない。しかし〈竜〉に付いて詮索されたくないので、これに関しては簡単な説明で済ましてしまう。
次に説明したのは獣人(けものびと)と呼ばれる種族で、人間と同位置に耳があるのだが「獣」の名前が示す通り狼に似た耳の形を持つ。また臀部から柔らかい体毛で覆われた尻尾が生えている。
〈獣人〉の本来の姿は耳の形が証明しているように狼で〈竜〉が用いている秘術を教えて貰い、現在の姿を取っているという。また元が狼ということもあり動きは俊敏で、高い木や崖でも簡単に登ることができ、全ての種族の中で突出した能力といっても過言ではない。
彼等は他の二種の種族と大きく異なり、人間との交流を行ない生業としている。だが、行なっているとはいっても地域が限定され、彼等が訪れるのは人間の人口が極端に少ない山間部が多い。彼等も心の片隅で人間を嫌っているのか、決して大都市に訪れることはない。
彼等の生業は、生活を支える為に行っているということか。此方も見方を変えれば、必要最低限以外のことでは人間と関わらずに生活を送っているということになり、どの種族も人間と距離を置いている。
「嫌われている」
フィーナの疑問にダレスは、静かに頷き返しそれを疑問の回答とする。しかし、いつからそれぞれの関係が悪化してしまったというのか。人間が書き記し保管してある記録では人間が有利になるように書かれている場合が高いので、一方の記録で判断するわけにはいかない。
各種族が保管してある記録を調べれば真の意味で正確な歴史が導き出されるかもしれないが、導き出された結論がおぞましいものであったら現在の危うい部分で保たれている平穏を崩してしまう。人間以外の種族は平穏な生活を望み、自らが進んで争いの火種を作らない。


