新緑の癒し手


「木は大丈夫?」

「大丈夫のようです。住処としている木が傷まないように、注意を払っているようですので。また、どのような物かわかりませんが、ヘルバの話では定期的に木の成長を助ける薬を塗っているようです」

「住めるということは、とても大きな木なのかしら? でも、私達の村にもこの場所にも……」

「人間が暮す場所にはありません」

 といって、ダレスが暮す村の周囲にも有翼人が住居として使用しているほどの巨大な木は存在せず、その巨大な物は有翼人が暮している場所だけに生息している特別な巨木といっていい。

「見たいわ」

「多分、無理でしょう」

「どうして?」

 彼等の村は人間が簡単に立ち入れる場所に存在せず、それ以上に有翼人自体が人間にいい印象を抱いていない。癒しの巫女であるフィーナが訪ねれば彼等は違う反応を見せてくれるかもしれないが、基本人間との交流を拒んでいるので訪ねても決して歓迎はしてくれない。

 その中で人間が暮す場所、特に聖都に訪れるヘルバは有翼人の中では異質な感覚の持ち主か、どちらにせよ時々訪れてくれるのはダレスにとって有難く、いい話し相手になっている。

 また、愚痴を聞いてくれるのでいいストレス発散になっているということは、ヘルバには内緒だった。これを知ったら何を言われるかわかったものではないが、彼がいないと精神面が安定しない。このどす黒い欲望が混じる神殿の中、ストレスを発散しなければ息が詰まってしまう。

「皆、仲良くできないのかしら。文化は違うけど、他の種族と交流ができれば面白いと思うわ」

「互いの歩み寄りが必要でしょう。特に、人間が他の種族を嫌っています。それが主な原因かと――」

「……神官」

 フィーナが蚊の鳴くような声音で発した言葉を、ダレスは聞き逃さなかった。彼女自身も神官のやり方を疑問視しているのだろう、それが無意識に発した言葉に繋がったといっていい。

 人間が歩み寄りの姿勢を見せ、施しの精神を前面に出せば状況が改善する可能性もないわけではないが、プライドの高い者達が自分からの歩み寄りに賛成するわけがない。死んでも行わないというのが彼等の考え方で、下手にプライドが高い者ほど厄介なものではない。