しかし、彼の場合は「矛盾」という言葉で言い表せるものではない。ダレスの母親は人間の一員だが、父親は人間の一員ではない。結果、ダレスは二種類の種族の血を引いて生まれた。
だから言葉で人間を批判していても、自分が守るべきものは守る。特に母親と同じ立場のフィーナに対してその気持ちが強くなるのは仕方ないことで、ダレスの心情を理解できる者は誰もいない。
「ところで、紅茶でも飲んでいくか?」
「どうした、急に」
「長話になりそうだから。それに、お前と久し振りにじっくりと話したい。積もる話も結構ある」
「……そうか」
「今、用意する」
「菓子も欲しい」
「ちゃっかりしているな」
「紅茶と菓子はセットだ」
「誰が言った」
「普段、井戸端会議をしているおばさん」
ヘルバの言い分が面白かったのか、ダレスは鼻で笑い珍しく感情を表面に出す。その感情の表し方にヘルバは口許を緩めると、二人だけの時くらい感情を表に出した方がいいと言う。
だが、彼の好意にダレスは頭を振る。彼が感情を常に封じているのはそれなりの理由があってのことで、ヘルバの好意に甘えるわけにもいかない。また、長い年月封じていたので顔の筋肉が動かないというのも本音。それに正直、どのように笑っていいのかも忘れてしまった。
「巫女に言わなくていいのか?」
「何を」
「お前自身のことだ」
「言ってどうする」
「あと、二週間だろう」
ヘルバの指摘にダレスは視線を逸らすと「ああ」と、囁き返事とする。勿論、ダレスも二週間の意味を嫌でも理解していたが、このように彼に面と向かって言われると心中穏やかではない。
それは、昨年までは特に問題はなかった。しかし、今年は守るべき存在のフィーナがいる。ダレスは再び視線をヘルバに戻すと、彼に二週間後自分の代わりに彼女の側にいて欲しいと頼む。無論、ヘルバがダレスの頼みを断ることはなく、寧ろ彼もそのつもりでいたと話す。


