新緑の癒し手


 ダレスの説明から知るセインという人間が信じられないのか、ヘルバは呆れたように肩を竦める。どのような生物であっても欲望には逆らえないが、馬鹿正直に生きるセインは褒められたものではない。ヘルバがダレスに「本当に見習いの神官なのか」と尋ねるほど、信じ難い。

「正真正銘の見習い神官だ」

「お前が心配する理由……わかったよ」

「だから、行けない」

「なるほど。なら、代わりに現状をお前の親父(おやじ)さんに伝えておこうか。どうせ手紙は……ああ、最初から無理か」

「距離的に届けられないし、たとえ届けられる距離としても誰も行きたがらない。あの村には……」

「自分達が最弱の種族というのを嫌でもわかってしまうからな。お前の故郷を訪ねると――」

 人間がダレスの父親が暮す村を訪ねた時の反応を想像したのか、ヘルバが肩を震わせ笑い出す。それは面白くて仕方がなく、自分達がどのような立場に置かれているのか知るいい機会だと付け加える。

 その意見に更に付け加えるかたちで、ダレスが続く。人間は、複数の種族がこの世界で暮しているというのを知っているが、あらゆる面で自分達に都合のいいように解釈している点が目立つ。

 確かに技術や知識の面では人間は優れているが、それだけで頭がいい種族とはいえない。本当の意味で頭がいいというのは、己の立場を弁え己の立ち位置を理解している者。そして己が持つ力を理解し、それを用いた場合どのような結末を迎えるのか先を読める能力に長けている。

 残念ながら人間は立場を理解しておらず、尚且つ先を読む能力に乏しい。一度言葉を止めた後、ダレスは厳しい言葉を続ける。周囲は争いの火種を作りたくないからこそ沈黙を続けているというのに、どうして態々火種を作ろうとしているのか。それが全く理解できないという。

「焼かれるのが好きなのだろう」

「なら、自分で焼けばいい」

「おお、手厳しい」

「その方がいいだろう」

「お前、時々恐ろしいことを言うよな」

 母親の件を含め、ダレスは人間の非情な一面を多く見てきた――いや、見過ぎた結果、ヘルバが言うように何の躊躇いもなく恐ろしいことを言葉として表すが、それが本心かどうか怪しい面もあった。ダレスの母親は人間で、現に今フィーナという人間の巫女を大事にしているのだから。