新緑の癒し手


 フィーナの精神状態を安定させるにはダレスが行なった行動は正しいのだが、彼等の意見としては「ダレスが行なった」という点が引っ掛かるようだ。それに常に目の届く場所に置いておきたいというのが彼等の本音であったので、ダレスのやり方をいちいち批判していく。

 彼等の言い分は自己中心的の身勝手そのものの意見なので、正論を述べているダレスに勝つことはできない。だからといってダレス相手に敗北を認めるのはプライドが許さないので、別の方法を取る。

 ドスっと鈍い音が、部屋の中に響く。その音の正体は、神官がダレスに暴力を振るった音。言葉で相手を負かすことができないのなら暴力で解決するという、何とも胆略的な考えの結果行なったものだ。

 自分が不利になった場合、人間は複数の行動を取るというのをダレスは知っている。一つ目が、今神官が行った暴力。二つ目が逆ギレ。そして三つ目が捨て台詞を吐き、その場から逃げる。

 どれもこれも特に弱い人間が見せる行動――というより生態の一種であり、神官は見事に一つ目の行動を取った。だが、神官は女神イリージアに仕える身分であって暴力を振るっていい身分ではないが、彼等はそれ自体を忘れてしまっているのか普通に暴力を振るった。

 右の頬に、鈍い痛みが走る。また暴力を振るわれたと同時に口内を傷付けたのか、何とも表現し難い味がする。それを唾液と共に喉の奥に流し込むと、ダレスは平然とした表情を作った。

 勿論、手加減なしの本気でダレスの頬を拳で殴ったのだが全く効いていない。暴力を振るった者はそれに苛立ちを覚えたのか、再びダレスに暴力を振るう。二度・三度――しかし、長く付き合っている暇はない。それに一方的に殴られるのも気分がいいものではないので、途中で相手の手首を掴み攻撃を止め、無言の圧力を相手に掛け精神的に追い詰めていく。

「は、歯向かうのか」

「……いえ」

「なら、手を離せ」

「……わかりました」

 相手の言葉に素直に従う素振りを見せるが、ダレスが簡単に手を離すわけがない。それに女神に仕える身分の者が暴力を振るうことが許せないのだろう、離す前に相手の手首を強く握った。

 手加減なしで暴力を振るわれたのだから、此方もそれ相応の仕返しをしないといけないのだが、本気で手首を握ったら骨を粉砕してしまうので多少の手加減を加える。だが、相手にとって相当の力だったのだろう、ダレスが手を離したと同時に蹲り呻き声を発していた。