彼が拒絶する理由としてフィーナが尊ぶ存在だからというのも考えられるが、ダレスがそのようなことで拒絶するわけがない。フィーナが知らない別の要因が関係しているというのは間違いないが、それがどのようなものなのかはダレスが答えてくれるわけもなかった。
「いつか、話してくれますか?」
「……わかりません」
「わからない」という言葉に隠されているのは、話したくないという本音と話せるものではないという真実。それが複雑に絡み合い、今のダレスの立場を作っている。これこそ興味本位で立ち入っていいものではなく、彼自身この点を一番気にしているのだと雰囲気で知ることができた。
しかし悲観ばかりだけではなく、今の出来事でいい面も見付けることができた。彼は感情そのものを失っているわけではなく、内面には感情が確かに存在していた。何か特別な意味を持って意識的に感情を封じているのだろう、彼が無感情の持ち主ではなかったことにフィーナは安堵していた。
「頭を冷やしてきます」
「水なら、あそこに……」
「流石に、噴水の中に頭を入れるわけにはいきません。それを行いましたら、庭師が迷惑します」
反射的に噴水の水を指差すフィーナであったが、ダレスが言うように噴水の水の中に頭を突っ込むという行為は憚られる。それに頭を冷やすといっても、本当に水で冷やすわけではない。冷やす方法はいくらでもあり、彼は特に珍しく昂ぶってしまった感情を抑えたかった。
「何処かへ行くの?」
「はい」
「一緒にいるって……」
「こればかりは――」
「駄目……なの?」
「フィーナ様にとって、良い場所ではありません。その場所は……俺の……母が眠る場所です」
正直、自分が母親の墓がある場所へ行くことを話したくはなかったが、現在のフィーナの精神状態を考えると、明確に向かう場所を提示した方がいいと判断し、彼女に場所を伝えた。
勿論、精神状態を考慮するのなら共に行くのが一番いい方法だが、あの場所へ行けば巫女の裏の面を嫌でも感じ取ってしまい、更に精神状態を悪くしてしまう。だからダレスは自分だけで行きたかったが、何を思ったのかフィーナも共にダレスの母親の墓へ行きたいと言い出す。


