新緑の癒し手


 全ては、独占の為に――

 人間そのものが持つ欲望に忠実に生きれば、それはある意味で人間らしい行動と表現できるが、独占に値する物かどうかと尋ねた場合、これは一部の人間が独占していいものではない。しかし彼等は巫女を一箇所に縛り付け、女神が齎した奇跡を我が物としている。結果、金が溢れ出す。

 まさに、血が金に変化する錬金術。

 だが、ダレスは何も言わない。

 ダレスは後方で隠れているフィーナに視線を向けると、彼女の耳にだけ届く声音で囁く。彼の言葉に頷き返すと、周囲の反応を確かめるように何度か視線を走らせた後、ダレスの後に続く。そして彼等が廊下の角を曲がり完全に姿を消した後、数人の神官が毒付いていた。


◇◆◇◆◇◆


「落ち着きましたか?」

「……うん」

「安心しました」

「……この場所って綺麗」

「庭師が、定期的に手入れをしていますので」

「私が暮していた場所にない花が咲いている。とても綺麗……まるで、血のように真っ赤で……」

 フィーナが眺めている花は、真紅の薔薇。彼女が「血」と表現するように、薔薇の花弁は禍々しいほど赤く、まるで鮮血で丁寧に染め上げたかのような独特の美しさが存在していた。

 ダレスは薔薇の茎に無数の刺が存在することを知っているが、フィーナに差し出す為と薔薇の茎を手折り彼女の目の前に差し出す。だが、いくら上手く刺を避けて手折ったとはいえ、無数に存在する刺の一部がダレスの肌を傷付け、一筋の血が彼の手の甲から流れ落ちる。

「血が」

「大丈夫です」

「で、でも……」

「痛みは、ありません」

 普段から身体を鍛えているダレスにとって、これくらいの傷は何ともない。それに軽く表面を傷付けた程度なのか、もう血の流れが止まっている。ダレスは纏っていた外套で傷口を拭うと、血が止まっているということを確認させるように、フィーナに己の傷口を見せていた。