大病を患ったり生死を彷徨うほどの大怪我を負った場合、巫女の血が用いられる。それらの経験がない場合「使用方法がわからない」という言い方が通じるのだが、巫女の血が治療に使われるようになって何百年も経過している現在「使用方法がわからない」という言い方はおかしい。
だから、血を一度も使用していない人物であっても「血を薬に混ぜ服用する」という方法を用いるというのを知っている。それだというのに、フィーナは「使用方法は知らない」と、言っていた。
巫女の血は全ての人間に癒しの力を齎す、女神が与えた素晴らしい力。血が多くの人間の病や傷を癒す為に使用されているので全員が方法を知っていると認識していたが、どうやら違うらしい。
ただの知識不足か、それとも別の要因が隠されているのか――ダレスはフィーナに巫女の血がどのように使用されているのか語っていく中で、その点を気付かれないように探っていく。
「フィーナ様が暮していた村の者は、血を使用なさらなかったのですか? 確か、巫女の血は……」
「私が暮していた村は、高い山に囲まれていて……聖都ディアンヌまで訪れる前までに……」
「ですが、それでも使用方法は……」
「ダレスが言っていた「薬と一緒に」というのは知っているの。私が知りたいのは、顔を血で汚している患者が……」
「それでしたか」
彼女の発言により、ダレスは自分が勘違いしていることに気付く。彼女は「血を薬に混ぜて服用」という方法は知っていた。そして彼女が本当に知りたいというのは、もうひとつの使用方法――巫女の血を薬と混ぜずに、直接喉に流し込むというおぞましい方法だった。
「それが一番、効果的のようです。ですが、直接口に入れるということは当然リスクも伴います」
「死ぬの?」
「最悪」
巫女の血は強い癒しの力を持っているので、通常その癒しの力を抑えて服用するのだが、大病を患う者や大怪我を負っている者は一時の猶予もないので、直接巫女の血を服用し強い癒しの力を期待する。
しかし強い癒しの力は、人間にとって逆に毒になってしまう。大半の者は血の力に耐え完全に回復するが、中には力に負けてしまい命を落とす者もいるという。そしてフィーナが見た顔を血で汚している者は、巫女の血を直接喉に流し込んだ患者だとダレスは説明する。


