新緑の癒し手


 定期的に採血を行う巫女の肉体は一般的に治癒力が高いとされているが、何度も肉体を傷付けては治癒能力が追い付かない。それに伴い傷が爛れ膿を持ち、高熱で寝込んでしまう。それを何度も目の当たりにしているので、フィーナの傷が爛れ膿を持たないように薬を多く塗る。

 その上に清潔な分厚いガーゼを置き、きつくならない程度で包帯を巻いていく。彼の手当ての仕方は神官が行った手当てと違い優しさが込められ、安心して彼に任せることができた。

 途中、フィーナは閉じていた瞼を開きダレスの姿を確認しようとするが、約束があるので寸前で気持ちを抑え付ける。手当ての最中、両者の間に会話はない。ただ彼女の耳に届くのは、手当ての間に生じる音のみ。

「終わりました」

「有難う」

「痛みは?」

「大丈夫」

「それは良かったです」

「その……もう、開いていいかしら」

「はい。失礼――」

 ふと、何を思ったのか途中で言葉を止めてしまう。ダレスは慌てて利き手を後方に隠すと、途中で止めた言葉を続ける。しかし、後方に隠していた利き手を彼女に見せることはしない。

 利き手だけを後方に隠していることに普通は違和感を抱かれるものだが、ダレスの立ち振る舞いが堂々としているのでフィーナに全くといっていいほど不信感を持たれることはなかった。

 後方で隠している利き手を気付かれないように何度か動かし、彼は利き手の調子を確かめる。だがなかなか調子が戻らないのか、ダレスが利き手を隠したままフィーナと会話を行う。

「ダレス」

「何でしょうか」

「私の血は……」

「必要としている方に使われます」

「どのように?」

 彼女の質問に、ダレスは一瞬言葉を詰まらせてしまう。正直、巫女の血の使用方法は口に出して語っていいものではない。しかし知りたいというフィーナに黙っているわけにもいかず、尚且つ自分の血がどのように使われているのか知りたいというのは正直な気持ちだ。同時に、ダレスは疑問を抱く。巫女の血は一般的とされているというのに、彼女は何故使用方法を知らないのか。