新緑の癒し手


 彼女の腕に巻かれている包帯が、全体的に赤く染まっている。神官達の手当てが中途半端だったのか、それともいい加減だったのか……止血がきちんとされていない。それに気付いたダレスはフィーナにその点を指摘すると、薬箱を持って来ると言い残し彼は部屋から出て行く。

 彼に指摘され血で染まる包帯を見た瞬間、フィーナの顔が真っ青に染まっていく。まさかこれほどまで出血しているとは思わなかったのだろう、彼女はか細い悲鳴を上げ視線を逸らす。

 このまま血が止まらなければ――

 不安が心を支配し始めたのか、フィーナの身体が小刻みに震え出す。しかし「ダレスが何とかしてくれる」という思いが勇気を与えてくれるのか、何とか平常心を保つことができた。

「手当ていたします」

 薬箱を手にしたダレスは、部屋に立ち入ったと同時にフィーナに向かいそのように言葉を発する。彼の言葉にフィーナは頷き返すと、近くに置かれていた椅子に腰掛け手当てを待つ。

 ダレスは薬箱を開き中から手当てに必要な物をテーブルの上に並べていくと、彼女に包帯が巻かれている腕を上げるように言う。彼の言葉に従うように腕を上げると、素早い動きで包帯を解いていった。そして全ての包帯が解き終えた時、ダレスは重要なことに気付く。

 神官は「止血」という形で手当てを行ったが、傷口に薬を塗ってその上から包帯を適当に巻いたといういい加減なやり方。その手当ての仕方を見たダレスは怒りの感情が湧いてくるが、表面に現れる前に感情を封じると、何を思ったのかフィーナに目を閉じて欲しいと頼む。


「どうして?」

「……お願いします」

「わかったわ」

 「何故?」という気持ちがないわけでもなかったが、フィーナはダレスを信頼しているので、素直に言葉に従う。ダレスは目を閉じたことを確認すると、流れ出る血を拭き取り傷口に薬を塗っていく。

 ふと、薬を塗る手が止まった。腕にある傷は、明らかに一回ではなく二回傷付けた跡がある。一回目の傷は躊躇い傷というものではなく、採血を目的として明確に傷付けたものだ。

 だが、二回傷付けた跡があるということは、この二回目に何か裏が隠されているといってもいい。大方「血が足りない」と言われたのだろうと、ダレスは簡単に神官達の行動を見抜く。いや、見抜いたというのは正しい言い方ではなく、ルキアも同じことを言われた過去があった。