このまま気絶してしまったらどんなに楽だろうが、腕から伝わる激痛がフィーナの意識を止め、意識を手放すことを許さない。その間も流れ続ける血は量を増し、壷の中に溜まっていく。だが深く傷付ければ傷付けるほど痛みが増し、フィーナは肩で呼吸を繰り返していた。
再度腕を傷付けた時、思った以上に深く傷付けてしまったのか時間の経過と共に痛みが増していく。また指先に痺れが加わり、このまま自分の腕がおかしくなってしまうのではという感覚に陥る。
苦しい。
気持ち悪い。
大量出血に伴う症状なのか、フィーナの顔が青白い。このままでは命に関わるが、神官達はフィーナの心配をすることなく、壷の中に血が溜まっていくことを冷たい視線で見守っていた。
そして――
血が溜まった。
「お疲れ様です」
「これで……」
「十分です」
神官の言葉に、フィーナは安堵の表情を作る。流石に、これ以上の採血は本当に命に関わってしまう。ギリギリの位置で採血を止められたことが幸運だったのか、それとも神官達がギリギリの位置を見極めていたのか。それが後者だった場合、実に恐ろしいものである。
その後、神官の手によって短剣で傷付けた箇所が手当てされていく。しかし時間を掛けて丁寧に手当てしていくというものではなく、止血できればいいという簡単な手当てだった。
包帯で巻かれた腕に触れつつフィーナは立ち上がると、神官達に視線を合わさず真っ直ぐ扉がある方向へ歩いて行く。この扉が開けば、自分の心を理解してくれる人物が待っている。それが嬉しいのか扉が開くと同時に、フィーナはダレスの姿を求めるように視線を動かす。
「ダレス」
ダレスはフィーナの姿を認めると、利き手を胸元に当て深々と頭を垂らす。彼の恭しい態度は決して嫌味は感じられず様になっており、彼の姿を見たフィーナの心臓はドクっと力強く鼓動する。
そして顔を上げると同時に言葉を発しようとするが、寸前でフィーナが発した「貴方の部屋に行きたい」という言葉が遮る。彼女の言葉から瞬時に理由を察したダレスは否定の言葉を言わず受け入れ、中断してしまったお茶の時間を楽しみましょうと提案するのだった。


