「ヘルバさんは、ご結婚は?」

「いい相手がいれば」

「いらっしゃらないのですか?」

「意外?」

「お優しいですし、こうやって相談に乗ってくれるいい人ですので、いらっしゃらないのは……」

「フィーナみたいな、優しい子が村にいれば付き合っているかもしれない。だけど、なかなか難しい」

「私……ですか?」

「そう」

 満面の笑顔を浮かべているヘルバは、見方によってはフィーナをナンパしている雰囲気とも捉えられる。突然のヘルバの言葉にフィーナは驚きを隠せないでいたが、自分はダレスの妻となることを選択したので、ヘルバの言葉を受け入れることはできないとキッパリと言い返す。

「……悲しいな」

 そのように言い肩を落とすヘルバだが、本気で落ち込んでいるわけではない。しかし根が真面目のフィーナが嘘の演技を見抜けるわけがなく、失礼なことを言ってしまったと謝る。流石に謝られるとは思わなかったのだろう慌ててヘルバが訂正しようとするが、完全に遅かった。

 刹那、ヘルバの肩が叩かれる。勘と漂う雰囲気から相手が何者か瞬時に察したヘルバは、反射的に相手と距離を取る。予想通り相手はダレスで、先程までのやり取りを聞いていたのか顔は笑っているが目は笑っていない。ダレスの表情に身の危険を感じたのか、ヘルバ言い訳をはじめる。

「何をしている」

「普通に、話を……」

「ナンパしていなかったか?」

「いやー、特には……」

「俺の聞き間違いか」

「そうそう。お前の結婚相手をナンパするほど、馬鹿じゃないよ。それに、平穏な家庭を壊す気もない。だから、そんな目で睨まないでほしい。ついついからかいたくて、言っただけだ」

「それならいいけど」

 まだ納得できない部分もあったが、これ以上のやり取りは無用と判断したのか、ダレス側から一方的に話を切り上げてしまう。竜独特の圧倒的な迫力から解放されたヘルバは安堵の溜息を付くと「土産を用意した」と言い、ダレスに持っていた大きな包み紙をダレスに手渡す。