新緑の癒し手


「仕方ない……か」

「だけど、その気持ちだけは……」

 本当は友と呼んだ者を助けたいのだが、一時的な感情で動いていいものではない。また族長である父親の命令は絶対で、息子とはいえ逆らったどのような処分を受けるかわからない。フィル王子もダレスの気持ちを理解しているのだろう、助けを求める素振りを見せなかった。

 それでも、何か友に言わないといけない。その思いがダレスの心の片隅に存在しているのだろう、切ない表情を浮かべつつフィル王子に言葉を発しようと試みる。だが、この場に似合う適切な言葉がなかなか見付からず、在り来たりな言葉しか掛けることできなかった。

「無理だけは、しないでほしい」

「……有難う」

「これで――」

「ああ」

 それが、互いの別れの挨拶。

 途切れ途切れの短い言葉のやり取りであったが、互いの心情が通じ合っているからこそこれで十分だった。また、二人は種族の他に置かれている立場が大きく異なっている。これ以上関わってしまうと慣れ合いになり、特にフィル王子は課せられた役割を全うできなくなってしまう。

 別れ際、互いの顔を見ることはしない。見れば振り切った友への情が湧いてしまうので顔を見ることを拒み、それぞれの道を進んでいく。ダレスはフィーナの側へ行くと、優しく肩を抱き自身の胸に引き寄せる。一方フィーナはダレスに縋り付くと、外套を握り締めた。

 フィーナは二人のやり取りを聞いていたので、何も言うことができない。いや、雰囲気で何も言ってはいけないと察したのだろう、ダレスの胸に顔を埋め続ける。ダレスはフィーナを連れ外に出ると父親の前に行くと一部始終を話し、二度と人間の世界に戻らないと宣言する。

「それでいい」

「干渉もしない」

「人間には人間のやり方がある。それにあの者を信じているというのなら、手を出してはならない」

「わかっている」

 父親の重い言葉を受け止めると、隣にいるフィーナを一瞥する。フィーナはダレスの視線に気付いたのだろう、上目遣いでダレスを見ると微笑を浮かべた。彼女の笑顔に同じように微笑を浮かべると、前々からハッキリと結論を出すことがなかった事柄について話し出す。