「人間だから」と言いフィーナを批判したら、人間がやっていたことと同じになってしまう。また、懸命に頑張っている姿を見ていると健気に思え、このまま村で暮らしていて欲しいと思う。それ以上に小さい子供達が懐いているので、追い出したら何を言われるかわかったものではない。
その話にレグナスは、フィーナが竜の村にいるべき存在だと認識する。いや、それ以前に息子と一緒になって欲しいと願う。ダレスが神殿で暮らし続け独身を貫いていたら、伴侶を見付けず次期族長問題に関わってしまう。しかしフィーナが側にいるので、心配はない。
レグナスは二人が立ち去った方向を一瞥すると、二人が戻って来るまでこの場で待つと告げる。自分達が一緒に行って何かができるわけではなく、それどころか邪魔になってしまう。レグナスが何を言いたいのか瞬時にわかったのだろう、動かず静かに待つことにした。
ただ、彼等の表情は優れない。明らかに、ダレスとフィーナを心配しているような雰囲気が漂う。だが、レグナスの命令があるので動くわけにもいかず、それに狼狽するのも憚れる。
無事で――
そう言いたいのだろうが、彼等は言葉に出すことはない。
「ダ、ダレス」
「やはり……か」
「女神様が……」
「大丈夫か?」
「……うん」
「無理なら、俺に抱き付いてもいい。それに、これらを見ていられないのなら背けても構わない」
「……有難う。だけど、心配しないで……大丈夫だから。それに、結末を見ると約束したもの」
言葉では気丈に振る舞っているが、見るも無残に砕けている女神の像を目の当たりにして正常ではいられない。ましてや高い信仰心を持つ者なら尚更の反応で、フィーナの身体は小刻みに震えている。女神の像は頭部と身体は二つに割れ、特に顔の部分の罅割れが酷い。
多くの者が砕けた女神の像の前で大粒の涙を流し、床に崩れ落ちている。唯一異なる態度を取っていたのはナーバルで、彼は壁に寄り掛かり両手で頭を抱えている。明らかに近寄りがたい雰囲気が漂っていることに気付いたダレスは、フィーナを守るかのようにナーバルから離れた。


