新緑の癒し手


「これが、本当の最後だ」

「血の歴史が終わる」

「そうだ。人間を支配していた血の呪縛が解け、解放される。その後、人間の歩む道は……」

「王子に任せればいいよ」

「……そうだな」

 これから先は干渉しないと言ったのだから、そのまま遠くから見守ればいい。そう父親に言葉を返すと、ダレスはフィーナと共に建物の中に戻る。二人が立ち去ると同時にレグナスは護衛に付いていた二匹の竜の側へ行くと、つい今しがたまで殺気を放っていた者達の労を労う。

 レグナスの言葉に彼等は人間の姿に変化させると、恭しく頭を垂れる。何か思うことがあるのだろう、途切れ途切れで言葉が発せられる。それは今まで散々見下されていた人間を愁えるもので、まさかこのようなことになるとは思ってもみなかったのだろう表情が優れない。

「……優しいな」

「巫女……いや、フィーナを見ていると人間の全てが「悪」とは思えません。彼女は、優しい」

「それに、あの王子も……」

「いい人間だよ」

 彼等の人間の見方に、レグナスは納得したように頷く。自分の力に過信し過ぎた結果、周囲に目を向けようとしなかった。しかしそれは全員ではなく、一部の者は真っ当な意見を持つ者もいる。それがフィーナでありフィル王子だが、現状は根本まで腐ってしまっている。

 腐って腐臭まで放ち、最終的には地面に落下した。それが、女神に見捨てられたことだろう。「彼等のような者が多ければ――」という本音に、レグナスは微かに口許を緩めていた。

「今、二人の幸福を願う」

「それは、我々も……」

「優しいな」

「見ていて、ほのぼのとします」

「族長が認めているのなら、尚更です」

「嬉しい言葉だ」

 次期族長の地位に就くダレスの伴侶が人間であったとしても、彼等は異論を唱えることはない。深く互いに愛し合い離れられない状況にあるのなら、一方的な自論で無理に引き離すことはない。それどころか二人の仲を認め陰ながら応援していると、レグナスに伝えた。